あたご型護衛艦は艦隊防空を任務とし、『こんごう型』に次いでイージスシステムを搭載ている最新の護衛艦である。あたご型は当面2隻が建造・就役する。
あたご型は、艦隊の防空を任務とする対空誘導弾搭載護衛艦(DDG)で、通常の護衛艦は自衛用に射程の短い
シー・スパローを搭載しているがDDGは他の艦隊全体の防空を担うために射程の長い
スタンダード・ミサイル2(SM2)を搭載している。
武装
主砲は
62口径5インチ砲を装備している。この5インチ砲は海上自衛隊で初めての装備であり、あらゆる天候下でも対水上・対空・対地射撃が可能である。しかし、連射速度が毎分20発程度であり、短時間にミサイルや航空機に対して射撃を行う対空射撃には不利であるといわれている。しかし、シールドが直線的なデザインでこんごう型が搭載していた
127mm速射砲よりもステルス性が向上しているほか、重量も10t近く軽量化されている。
対艦ミサイルはこんごう型のハープーンではなく国産でハープーンより高性能な90式対艦誘導弾を装備している。また、不審船対策などのため
高性能20mm機関砲を水上射撃などが可能な性能向上型のBlock1Bに順次改良されているが、この「あたご」からは就役時からBlock1Bを装備している。
船体
ステルス性はこんごう型でも考慮されていたが、あたご型ではさらに進んでおり、一番の特徴は、マストをこれまでのパイプを組み合わせたものではなく、直線的な塔型マストに変更されている。この塔型マストは輸送艦の
おおすみ型で初めて採用され、掃海母艦の
うらが型でも採用されていた。おおすみの採用から10年近くたった後に初めて護衛艦でも塔型マストが採用された。これは、従来のマストよりも塔型マストは重量があるため、艦橋などの重量増加に対する設計が必要であったためで、なかなか採用されなかった。しかし、この塔型マストは19DDにも採用予定であり、今後は主流になっていくとみられる。
ステルス性については、誤解されがちだが、艦載レーダーなどから発見されないためではなく、対艦ミサイルなどから発見されにくくするのが主な目的である。艦載レーダーは高性能なものが搭載されているが、いわば使い捨ての対艦ミサイルはさほど性能が良くないレーダーを搭載しており、このレーダーから発見されにくくするためである。しかし、最近は対艦ミサイルの性能が向上しているため、世界的にステルス性をさらに強化している傾向がある。
航空能力
海上自衛隊のDDGはあまつかぜ型、たちかぜ型は後部にスタンダード単装発射機を装備していたためヘリコプターの着艦スペース(ヘリ甲板)自体がなく、ヘリの発着艦自体ができなかった。そして、たちかぜ型の次に建造されたはたかぜ型と、その次に建造されたこんごう型では後部にヘリ甲板があり、ヘリの発着艦はで可能であった。しかし、ヘリの格納庫を備えていなかったため一時的な着艦のみが可能であり、整備・格納スペースがなかったため固有のヘリを装備していなかった。
しかし、あたご型ではDDGとして初めてヘリ格納庫を装備したことによってヘリの搭載が可能になった。ヘリ格納庫はDDのあさぎり型以降2機搭載が可能となっているが、このあたご型では1機分のスペースのみである。
しかし、今のところ設備のみであり、固有のヘリは搭載しておらず、ヘリ関係の乗員も搭乗していない。艦隊防空が主任務のDDGにとっては艦載哨戒ヘリは不要ともいえるが、今後の動向に柔軟に対応ができるようにヘリ格納庫と設備を備えている。
↑ ヘリ甲板には左側のヘリ格納庫へまっすぐヘリを移動させるための軌条が設けられている。
あたご型は
たちかぜ型のたちかぜを代替するために「あたご」が、「あさかぜ」を代替するために「あしがら」が建造された。たちかぜ型の最終艦である「さわかぜ」については現在、護衛艦隊旗艦を務めているが、護衛艦の定数削減などのため護衛艦隊旗艦は廃止されるため、「さわかぜ」の代替艦は建造されない。(1個護衛隊群に2隻、現在4個護衛隊群あるため計8隻のDDGが必要とされているが、はたかぜ型2隻、こんごう型4隻、あたご型2隻で足りるため。)
このため、当面DDGの建造は行われないこととなり、はたかぜ型の代替艦が必要とされる頃には建造費用などの関係であたご型を基本としつつ運用実績を踏まえて(ステルス性の強化などの)改良型になるとみられる。
同型艦及び年表 |
番号 |
名前 |
計画年度 |
起工 |
進水 |
就役 |
退役 |
177 |
あたご |
2002年度 |
2004年4月5日 |
2005年8月24日 |
2007年3月15日 |
(就役中) |
178 |
あしがら |
2003年度 |
2005年4月6日 |
2006年8月30日 |
2008年3月13日 |
(就役中) |