ゆうばり型護衛艦とは、いしかり型護衛艦をもとに拡大設計された小型の護衛艦である。いしかり型を拡大したものであるため、いしかり型の準同型艦として区別されることもある。
ゆうばり型護衛艦は1隻のみ建造されたいしかり型護衛艦を拡大したもので、全長を6m延長して基準排水量が180t増加いしているが、その他の艦の設計などはほとんど変更されていない。このため、いしかり型の準同型艦とされることもある。
船型は、中央船楼型と呼ばれるもので、これは船体の中央部分が一段高くなっている船型のことである。この中央船楼型は船体の小ささの割に艦内のスペースを広く取ることができるが、艦首と艦尾が低いため、綾波性に劣っている。そして、この中央船楼型の船型は現在海上自衛隊の艦艇ではこのゆうばり型のみとなっており、大変珍しい。
武装は、艦首から
76mm速射砲、一段高くなっている船楼の先端部分にボフォースロケットランチャー、艦の中央部分両側に
3連装短魚雷発射管、そして、艦尾にはVの字型に4連装の
ハープン発射管を2基装備している。
ハープンは海上自衛隊ではいしかり型が初めて装備し、当時海上自衛隊で採用が始まったばかりであった。そして、武装面での最大の特徴は、ボフォースロケットランチャーを装備している点である。このボフォースランチャーは対潜ロケット弾のボフォースを発射するものであるが、現在ボフォースランチャーを装備している艦は海上自衛隊ではこのゆうばり型のみであり、大変珍しい。
余談ではあるが、観艦式ではボフォースの発射が展示されるが、前回(2006年)の観艦式ではいしかり型とこのゆうばり型2隻が展示を行ったが、いしかり型はすでに退役し、ゆうばり型も退役は間近で、次回の観艦式では展示されないとのことで、ボフォース発射の穴は何が埋めるのかと気になっている。
そして、今日では護衛艦の標準装備となっている
高性能20mm機関砲を将来搭載できるように設計されたが、いまだに搭載されておらず、艦齢を考慮すればこれから搭載されるとは考えにくい。また、
シー・スパロー発射機も搭載しておらず、対空警戒・戦闘時に必要となる対空レーダーも搭載していない。ただし、対水上レーダーにはシースキマー(低空を飛ぶ)ミサイルの捕捉性能に優れているOPS−28型を装備(OPS−28型の対水上レーダーを装備することによって対空レーダーを省略)しているため、76mm速射砲を使ったある程度の対空射撃は可能である。
このように、対空能力がほとんどないのは、もともと沿岸哨戒艦の代替として地方隊が任務とする沿岸警備用の護衛艦として建造されたことと、船体が過小であるため、対空能力を持たせられなかったためである。
いしかり型を拡大したゆうばり型であったが、それでも船体が小さかったため、2隻のみ建造され、その後は設計を新たにし、さらに拡大されたあぶくま型に移行している。
艦齢を考慮すれば今後数年で除籍するとみられており、当初は新型装備の採用など海上自衛隊で唯一の中央船楼型の船型、ボフォースランチャーの装備をしている艦も時代とともに消えてゆくことになる。
主要目 |
型名 |
ゆうばり |
艦種 |
護衛艦 |
記号 |
DE |
基準排水量 |
約1,470t |
長さ |
約91m |
幅 |
10.8m |
深さ |
6.2m |
喫水 |
3.6m |
速力 |
25ノット |
乗員 |
95人 |
主要兵装 |
イージス装置一式
62口径76mm速射砲
ハープン
ボフォースロケットランチャー
3連装短魚雷発射管×2
|
便宜上、いしかり型の年表及び写真も掲載する。
同型艦及び年表 |
番号 |
名前 |
計画年度 |
起工 |
進水 |
就役 |
退役 |
226 |
いしかり |
1977年度 |
1979年5月17日 |
1980年3月18日 |
1981年3月28日 |
2007年10月7日 |
227 |
ゆうばり |
1979年度 |
1981年2月9日 |
1982年2月22日 |
1983年3月18日 |
(就役中) |
228 |
ゆうべつ |
1980年度 |
1982年1月14日 |
1983年1月25日 |
1984年2月14日 |
(就役中) |