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砲こう武器

『砲こう(砲熕=火砲、大砲)武器』では護衛艦などに搭載されている速射砲・機関砲などの火砲をひとまとめにしています。

62口径5インチ砲

62口径5インチ砲


 62口径5インチ砲は、あたご型から搭載を開始した5インチ砲。

アメリカのユナイテット・ディフェンス社(現、BAE社)が開発を行った艦載砲で、名称はMk45Mod4。海上自衛隊ではこれを日本でライセンス生産をおこなったものを『62口径5インチ砲』として採用している。

 この5インチ砲は、あらゆる天候下で昼夜問わず対空・対水上・対地射撃が可能で、現有のあらゆるタイプの5インチ砲弾を射撃可能である。射撃速度は高速射撃時での不具合を防止するため毎分20発程度で、127mm速射砲の射撃速度の半分程度であるため、短い時間に多数の砲弾を射撃しなければならない対空射撃には不利ではないかと言われている。しかし、この5インチ砲は全体の重量が約30tに対し、127mm速射砲は約40tと10t近く軽量化されているほか、ステルス性も向上している。

 ←62口径5インチ砲は砲身が長いのが特徴である

 現在はあたご型の「あたご」と「あしがら」が装備しており、19年度計画護衛艦(19DD)にも搭載予定であり、今後の主流砲になるると見られる。


なお、一部でこの砲を『5インチ速射砲』と、速射砲として表記しているものもありますが、あたごの展示パネル(下の写真)には『5インチ砲』(速射砲と表記しない)であったため、ここでは速射砲として表記していません。


性能・諸元
名称 62口径5インチ砲
重量 約30t
砲身長 62口径
初速 約800m/秒
発射速度 16〜20発/分
最大射程 約24km
弾丸重量 約32kg




54口径127mm速射砲

54口径127mm速射砲


 54口径127mm速射砲は護衛艦こんごう型及びたかなみ型に装備されている速射砲。

 イタリアのオットブレーダ社が開発し、対空・対水上射撃のほかに対地支援射撃も行える。海上自衛隊では、日本製鋼所がライセンス生産をし、対空誘導弾搭載護衛艦(DDG)の「こんごう」で初めて搭載され、こんごう型、たかなみ型に搭載されている。搭載する艦艇はこんごう型とたかなみ型のみで、たかなみ型の最終艦の「すずなみ」が計画された次の年度に計画されたDDGあたご型からはアメリカの62口径5インチ砲を搭載している。(5インチとはミリに直すと127mmだが、主にイタリアのものはミリで、アメリカのものはインチであらわす。)

 砲身を最大仰角にしている127mm速射砲。

性能・諸元
名称 54口径127mm速射砲
重量 約40t
砲身長 約6.86m
旋回範囲 −165度〜+165度
俯仰角度 −15度〜+85度
給弾方式 自動
砲身冷却方式 水冷
操作方式 全自動電気油圧式
砲塔人員 無人
砲員 5名(砲台長、給弾手×4)
初速 約810m/秒
発射速度 40発/分
最大射程 約24km
最大高度 約15km
弾丸重量 約32kg




62口径76mm速射砲

62口径76mm速射砲


 62口径76mm速射砲は護衛艦「むらくも」に初めて搭載され、以降の護衛艦の主流砲となっている速射砲。

 イタリアのオットブレーダ社が開発した小型・省力化砲で、アメリカ、ドイツなどに採用されており、小型艦艇にも搭載が可能な速射砲。海上自衛隊では護衛艦「むらくも」に試験的に搭載されて以降、はつゆき型あさぎり型むらさめ型などに搭載されているほか、掃海母艦「ぶんご」や護衛艦から種別変更された練習艦、練習艦として建造された「かしま」、訓練支援艦「くろべ」、「てんりゅう」にも搭載されており、海上自衛隊艦艇の主力砲。

小型・軽量なため、ミサイル艇はやぶさ型にも搭載されている。こちらは従来のドーム型のものではなく、ステルス性を考慮した直線的な砲塔のものとなっている。

 従来のドーム型の76mm速射砲。

性能・諸元
名称 62口径76mm速射砲
重量 約7.5t
砲身長 62口径
俯仰角度 −15度〜+85度
給弾方式 自動
砲身冷却方式 水冷
操作方式 全自動電気油圧式
砲塔人員 無人
砲員 4名
発射速度 10〜100発/分(可変)
最大射程 約16.3km
弾丸重量 約6.4kg




73式54口径5インチ単装速射砲

73式54口径5インチ単装速射砲


 73式54口径5インチ単装速射砲は護衛艦「たかつき」に初めて搭載され、これまでの大型護衛艦の主流砲。

 米軍での正式名称はMk42で、国産したものが73式となっている。弾火薬庫からの揚弾・装填が完全自動となっている。船体構造の精度が必要とされる。これまでの大型護衛艦の主流砲であったが、現在では、はるな型、しらね型、たちかぜ型はたかぜ型といった古い艦艇に搭載されているのみである。




 DDHのはるな型、しらね型はともに艦首に2基背負式に装備しており、独特の威容を誇っている。また、DDGのたちかぜ型とはたかぜ型は艦首に1基と艦尾(たちかぜ型はスタンダード単装発射機の前方、はたかぜ型はヘリ甲板の前方)に1基装備している。
このように砲を2基装備している護衛艦は今日では珍しく、現在、砲を2基装備しているのはこの5インチ砲を装備しているはるな型、しらね型、たちかぜ型、はたかぜ型のみである。


 赤で示した部分のバケットは薬きょう受け。

性能・諸元
名称 73式54口径5インチ単装速射砲
重量 約67t
砲身長 54口径
俯仰角度 −15度〜+85度
給弾方式 手動
操作方式 全自動電気油圧式
砲塔人員 有人
発射速度 35発/分
最大射程 約23km(水上)
最大高度 約15km
弾丸重量 約32kg





高性能20mm機関砲(CIWS)
高性能20mm機関砲(CIWS)


 高性能20mm機関砲は全自動で目標の捜索・発射などを行う近接防御システムである。

 海外ではファランクスと呼ばれるものだが、海上自衛隊では『高性能20mm機関砲』と呼んでいる。海上自衛隊ではしらね型の「しらね」が新造時から搭載する予定だったが、実際には平成2年に搭載され、2番艦の「くらま」が初めて新造時から装備し、就役済みの護衛艦などにも順次追加装備された。完全に独立した構造でり、電源と冷却用の水が供給できればあとは搭載するスペースがあるだけで簡単に搭載できるといった特徴がある。

 システムは捜索・探知・追尾・評価・発射などが自動で行えるもので、現在多くの護衛艦が装備しているCIWSはBlock0と呼ばれるものだが、武装工作船等への対処のため平成17年度から能力向上型のBlock1Bへの改修がこんごう型の「ちょうかい」から順次行われている。Block0とBlock1Bとの違いは、新型レーダーの採用、赤外線センサーによる工学照準、遠隔手動操作が可能、砲身の延長、改良型弾薬の採用、作動角度の拡大で、これによって射撃精度が向上され、小型のボートや低空目標などに夜間でも正確に射撃ができるようになった。ちなみに、就役時からブロック1B型を装備しているのはあたご型の「あたご」からである。


 

 左側のCIWSが多くの護衛艦で装備しているタイプで、右側のCIWSがBlock1Bである。外観上の違いは、レーダードームの右側にある赤線で示した赤外線カメラであり、この赤外線カメラの映像は艦内にある管制室のモニターに映し出され、水上目標射撃時や低速の対空目標射撃時に使用する。
また、砲身の長さは左側のタイプが約1.5mで、右側のBlock1Bが約2mと延長され、青色で示した砲身のブレを防ぐ支えも改良されている。

 米海軍では、近接防御用にこのファランクスではなく、RAMミサイルを導入しつつある。この理由は、機関砲であるため、射程が短く、高速目標などに対応できる時間が短い、同時に複数の目標に対処できない、ミサイルを撃墜するには威力が弱い、などの理由からであり、RAMミサイルは、ミサイルであるため、射程が長く、遠距離から対処可能でである。
しかし、海上自衛隊ではRAMミサイルを導入する具体的な計画はない(ただし、護衛艦あぶくま型は艦橋前方に後日装備の予定で設計された)。仮に、RAMミサイルを導入したとすれば、ミサイルに対する防御能力は格段に向上するといってもいいが、RAMミサイルでは海上射撃ができないため、不審船などに対する射撃ができず、近距離での海上射撃能力は低下してしまい、これを補完する別の火器が必要になってしまう。

 なお、CIWS(シウス)とは、lose−eapon ystemの略で、近接防御火器の総称であり、このファランクスを個別に示すものではない。

性能・諸元
名称 高性能20mm機関砲(Block0)
重量 約6t
操作方式 全自動システム
発射速度 3,000〜4,500/分
最大射程 約4,500m
初速 約1,100m/分
旋回範囲 −−−
仰俯角度 −−−


そのほか、掃海艇には自衛と掃海のために手動式の20mm機関砲、ミサイル艇1号型には遠隔操作型の20mm機関砲が装備されている。






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