これまでは、64式小銃にスコープなどを取り付けた狙撃仕様が使用されてきたが、ゲリラや特殊部隊対処のために2003年度から長距離で正確に狙撃することのできる本格的な対人狙撃銃が導入されたのである。この狙撃銃はアメリカのレミントン社のM24SWSをスコープ、保管用ケース、整備用工具や交換部品などをセットで輸入している。
ボルトアクション式とは、射撃の際に弾を1発ずつ手動で装填するタイプのことで、オートマチックと比べて射撃の精度が一般的に高いのが特徴である。ちなみに、M24のモデルの中にはマガジン式のものもあり、こちらは装弾数20発とインナーボックスマガジン式であるM24SWSの5発よりも多くなっているほか、マガジンチェンジによって速やかに弾の補給ができるようになっている。個人的にはこのバージョンが採用(M24SWSを導入した当初はマガジン式のものはまだ開発されていなかった)されたほうがいいのではと思っている。
運用にあたっては対人狙撃銃を持って狙撃を行う射手と観測手がチームを組んで行動する。
観測手は単眼鏡などを使って狙撃のために必要な標的との距離や風向きなどから弾道を計算し、射手に指示を与える。
さらに、狙撃以外の場面では対人狙撃銃は連射力などの関係で近接戦闘には向かないため観測手は小銃を持って射手を護衛する任務を負っている。さらに、通信機も装備して他の部隊などと連絡を取ることになる。
また、射手と観測手は敵に気付かれないように行動する隠密行動が基本であり、通常の部隊の隊員は迷彩服を着ているのみだが射手と観測手は迷彩服に加えてさらに偽装効果を高めるためにギリースーツ(右の写真の隊員が着ているもの)と呼ばれる服を着て行動する。
このギリースーツは網のような構造になっており、布地に迷彩パターンを印刷した迷彩服よりも立体的になり、周りの風景に溶け込みやすくなっており、偽装効果が高くなっている。右の写真では対人狙撃銃をそのままの形で持っているが、実際には銃にも布を巻くなどして銃の迷彩効果を高めて行動することになる。
この対人狙撃銃の配備によって対人狙撃銃を使って人質を取ったゲリラを遠距離から狙撃したり、遠距離から敵の指揮官を狙撃し、混乱したところを一挙に攻め込むなど陸自の戦術にも幅が広がったことは間違いなく、配備は画期的ともいえる。
諸元・性能 | |
名称 | 対人狙撃銃 |
口径 | 7.62mm×51(NATO) |
全長 | 1.092m |
バレル長 | 610mm |
重量 | 4.7kg |
装弾数 | 5発 |
作動方式 | ボルトアクション |
開発 | アメリカ レミントン社 |