備考
AH−1Sは、通称『コブラ』で知られる対戦車ヘリコプターで、原型はアメリカのベル社が汎用ヘリの傑作機であるUH−1をベースに1965年に開発してアメリカ陸軍が採用したものである。コブラと言う名前の由来は、低空で飛行する様子がヘビのコブラの姿に似ているからである。
我が国においては、1977(昭和52)年度と1978(昭和53)年度に研究用として各1機を輸入し、1982(昭和57)年度の22機から導入が開始され、当初は92機の配備が計画された。7機目に当たる機体以降はライセンス生産がされた機体で、ライセンス生産は2000年に終了しており89機の生産を行った。
AH−1Sコブラは1986(昭和61)年3月に北海道の北部方面隊に第1対戦車ヘリコプター隊が編成され、東北方面隊、西部方面隊、東部方面隊、中部方面隊と次々に編成された。現在は80機程度が対戦車ヘリコプター隊と航空学校に配備されており、3分の1近くの機体が暗視装置を搭載して夜間戦闘能力をもつC−NITEにアップグレードされている。
武装は、機首下に3銃身20mm機関砲を備えているほか、胴体横のウィングスパンに吊り下げる形で19発入の70mmロケット弾発射機、対戦車ミサイルTOW(通称『トウ』)発射機を搭載できる。これらのウィングスパンに搭載するロケット弾発射機とTOW発射機はウィングスパンの片側に2カ所ある吊り下げ箇所に任意で搭載することができ、全く搭載しない状態やすべてロケット弾発射機を搭載する状態など任務に応じて武装を変えることができる。
AH−1Sコブラの導入は陸自の部隊運用を根本から変えてしまった。導入以前は航空科は人員・装備などの“輸送”程度であったが、AH−1Sは対戦車ヘリコプターとの名のとおり、トウ(TOW)ミサイルなどの装備で敵戦車を撃破できる存在である。このため、上空を自在に飛び回る打撃力として冷戦期には北海道の北部方面隊に真っ先に配備された。
そして、いわゆる冷戦型の脅威が減少し、新たな脅威、つまり、テロ組織、ゲリラ・コマンド(いわゆるゲリコマ)部隊の攻撃と言う脅威が増し、普通科部隊などと密接に協力した作戦が重要になっている。
その重要な作戦の一部がAH−1Sで輸送ヘリ部隊の護衛や部隊の到着前に戦闘車両などを撃破し、着陸地点を制圧、続いて輸送ヘリなどが地上部隊を輸送すると言ういわゆる『ヘリボーン』作戦においても上空を自由に飛ぶ3次元の強力な火力としての存在はますます重要になってきている
導入開始から30年近く経過するため老朽化に伴う更新として戦闘ヘリコプターAH−64D(通称、アパッチ・ロングボウ)の導入が始まった。このAH−64Dは高性能レーダーとデータリンクなどで圧倒的にAH−1Sを超える能力を誇っているが、高性能がゆえの維持コストや製造元の生産中止などのため(一説には高性能レーダーが日本の地形に合わなかったとも)早々と調達が打ち切り(もともと試験導入の意味合いもあった)になったため新たにAH−1Sの後継機種の選定が行われている。新たな後継機に関しては国産のOH−1を改造して武装させる案などもあるようである。そして、すでに調達されたAH−64Dと新たな後継機と組み合わせた運用なども検討されているようである。
諸元・性能 |
名称 |
AH−1S |
乗員 |
2人 |
全幅 |
13.4m(ウィングスパン幅:3.28m) |
全長 |
16.16m(胴体:13.59m) |
全高 |
4.19m |
ローター直径 |
13.41m |
エンジン名称 |
T−53−K−703 |
エンジン出力 |
1,134SHP(連続) ×1 |
最大全備重量 |
4,536kg |
最大速度 |
231km/h |
巡航速度 |
約230km/h |
航続距離 |
約460km |
実用上昇限度 |
5,120m |
武装 |
3砲身20mm機関砲・・・1
70mmロケット弾
対戦車ミサイル TOW |
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〜機動飛行編〜