トップ陸自装備 ⇒ このページ

82式指揮通信車

82式指揮通信車

               



備考

 82式指揮通信車は、戦後初めての国産の装輪装甲車(=タイヤを駆動させて走る装甲車両)で、1974年に研究開発を開始し、1982年に制式化され、翌年の1983年度から部隊配備が始まった指揮通信用の車両である。

 82式指揮通信車は文字通り指揮や通信を目的とした車両で、複数の無線機を搭載している。停止状態で約80kmの交信が可能なAM無線や約35kmの交信範囲を持つFM無線などを搭載し、下級部隊や上級部隊などに連絡を行うことができる。配備開始から20年以上経過しているため全国の部隊に配備されており、師団司令部をはじめ、(連)隊本部や特科中隊など多くの部隊に配備がされている。

写真右側に見えるのが5.56mm機関銃、左端に見えるのが12.7mm重機関銃。
 車体は国産初の6輪駆動の装輪装甲車で、車体前部に操縦手席と助手席があり、通路でつながれた車体後部は一段天井が高くなっておりそこに乗員室がある。乗員室には6名が乗車可能で、各種通信機器や折り畳み式のテーブルなどを使って指揮・通信や、作戦会議などができる。なお、エンジンは車体左側の中央部にある。

 82式は、指揮通信用の車両のため、基本的に後方地域で活動を行うため、本格的な武装はしておらず、自衛のため乗員室上部のハッチに12.7mm重機関銃を装備している程度であとは必要に応じて操縦席隣の助手席の上部ハッチに62式機関銃を装備することができる。なお、62式機関銃が5.56mm機関銃MINIMIに更新されてきたことにより、62式ではなく、MIMIMIを装備する場合が多くなってきている。




防弾板を下した状態で走行するには矢印の先端のわずかな隙間から外を見なければならない。  そして、被弾を考慮して操縦席の窓には開閉式の防弾板が取り付けられており、必要に応じて窓を覆うことができる。この操縦席の窓は装甲車としては比較的大きな(通常の装甲車はキューポラ(潜望鏡)を使う)窓ガラスがあるが、操縦席の位置などの関係で視界が悪いため通常の走行時は助手席の隊員が身を乗り出して指示を行う。

 そして、防弾板を下して状態で走行するには左の写真のように防弾板にわずかに開けられた隙間から覗き込むようにして外を見て操縦しなければならない。これでは前方のごくわずかしか見えず、操縦はかなり大変である。なお、走行しないときなどには防弾板の隙間を小さい防弾板をスライドさせてふさぐこともできる。

 指揮・通信車両は、諸外国では兵員輸送車などのベース車両を流用して製作されることが多いが、82式指揮通信車は開発当初から指揮・通信用の車両として開発されたため、装甲兵員輸送車として使うには車内が狭いため諸外国には見られない独特の車種である。人員輸送を考慮して開発されなかったのは、本格的に装輪装甲車を導入する以前に試験的に導入したという意味合いが強いからではないかといわれている。この82式の開発によって得られたノウハウを生かして96式装輪装甲車が開発され、短期での開発・装備化につながっている。

平成11年度の1両をもって調達が終了しており、現在はおよそ250両が配備されている。今後は偵察警戒車や自走対戦車砲などのベース車両になるように開発された将来装輪装戦闘車両をベースとして指揮通信タイプが開発され、これが82式指揮通信車の後継になるとみられる。ただし、今のところ82式の後継開発は決まっていない。もともと指揮通信用として開発されたために無線通信能力が高いのが特徴であるが、これからの時代は無線連絡だけでなく、画像等のリアルタイム伝送能力なども必要とされるため、この後継車両にはそういった機能も持つようになるのではないかと思う。


この車両を流用した87式偵察警戒車や化学防護車がある。




諸元・性能
名称 82式指揮通信車
乗員 8人
全備重量 13.6t
全長 5.72m
全幅 2.48m
全高 2.38m
最低地上高 0.45m
登坂能力 約60%(堅硬道)
最高速度 約100km/h
エンジン 水冷4サイクル10気筒ディーゼル機関
305PS/2,700rpm
武装 212.7mm重機関銃・・・1
62式 7.62mm機関銃 又は
5.56mm機関銃MINIMI・・・1(必要に応じ)
開発 防衛庁 技術研究本部




inserted by FC2 system