前段演習

  当日は天気がよく、じりじりと照りつける日差しで去年のように天候不順で一部プログラムが実施されないなどは無く、すべて予定通り実施されました。だた、富士山に雲がかかっており、富士山が見えなかったのは残念。

 前段演習とは、陸自の主要装備を遠距離から近距離までと、戦車火力に分けて紹介していきます。


 前段演習の紹介の前にVIPをさらっと紹介します。



 折木(おりき)陸幕長です。




 小池防衛大臣です。大臣の入場のときだけ拍手が起こりました。『暑いので窓は開けませんのよ。』と思ったからか分かりませんが、窓は開けていません。例年なら窓を開けて手を振るのですが...。(帰りのときは窓を開けて手を振っていました)・・・どうでもいいことですね。




遠距離火力

航空火力


 航空火力は空自の支援を受けて行われる対地爆撃です。青森県の三沢基地からF−2支援戦闘機が飛行し、上空を2度通過し、1度目はピンポイント爆撃で、2度目は広範囲を爆撃します。



F−2が進入し、



ドカン。(写真のF−2は合成)



旋回してさようなら。
 実際には安全上、爆撃はせずに地上にあらかじめ設置した爆薬をタイミングよく爆破させるだけです。実際の爆撃とは違いますが、迫力があります。



特科火力

 特科火力として、特科部隊の展示です。特科部隊は火砲とロケット、ミサイルを装備する部隊で、主に、敵の部隊を遠距離から攻撃し、味方の普通科部隊、戦車部隊などの戦闘を容易にするための火力支援を行う部隊です。



まず、指揮官車が進入して誘導員が火砲を誘導します。




火砲が展開し始めました。まず、射撃準備に時間のかかかる155mmりゅう弾砲FH−70と203mm自走りゅう弾砲が進入し、しばらくしてから射撃準備が早い99式自走155mmりゅう弾砲が進入します。
この99式は進入が一番最後でありながら射撃開始は一番初めで、撤収の際は一番早く撤収すると言う機動性の高さを見せ付けてくれます。現代では火砲が射撃をすると、レーダーで砲弾を捉えられ、弾道から計算されて射撃位置が判明してしまい、敵からの攻撃を受けるため、同じ場所から何発も射撃することは無く、ある程度射撃したら陣地転換しなければなりません。このため、99式の高機動性は重要です。




その99式の射撃です。99式は砲弾などの装填が自動で行えるために早い間隔で射撃をすることができます。しかも、装填をする際に203mm自走りゅう弾砲のように砲身を水平にする必要がありません。
ちなみに無線では「自走15りゅう」(99式自走155mmりゅう弾砲)と呼ばれていました。




203mm自走りゅう弾砲ですが、いちいち203mm自走りゅう弾砲と書くのはめんどくさいので無線で言っていた「自走20りゅう」で書きます。
この自走20りゅうは口径が203mmもあり、自衛隊最大の火砲で、砲弾1発が90Kgもあり、破壊力は桁違いです。



自走20りゅうは砲がむき出しで車載されているため、装填の様子などが見られます。装填は、90Kgある砲弾を砲弾キャリアに載せて、2人で運び(と言っても1人あたり45Kgになる!)、クレーンのような物にキャリアを引っ掛け、そのクレーンで吊り上げ、装填装置に載せ、その装置が砲尾まで移動し、砲弾を押し出し、装填すると言う仕組み。ちなみに装填装置に乗せるのをクレーンで行うのは装置の位置が高く、持ち上げられないから。




続いて155mmりゅう弾砲FH−70の射撃です。FH−70は牽引されて移動するため、射撃準備に一番時間がかかります。右上の弾着地点でたくさん煙が上がっているのは他の場所からFH−70がタイミングを合わせて射撃したから。



このFH−70も装填作業が見えます。FH−70は装填がすべて手動ですが、装填トレイに砲弾をセットしておくと自動でトレイが砲尾まで持ち上がり、あとは棒で装填するという仕組み(総火演ではこの方法はやっておらず、手動でトレイを砲尾まで持ち上げている)があり、ある程度は負担が軽減している。が、砲位角が高いと自動で持ち上がるというのは行えなかった気がする。




特科部隊は最後に各火砲を使って射撃を行い、砲弾を空中で炸裂させて富士山の形を描きます。これは、異なる火砲が異なる射撃位置から正確に照準を行い、タイミングを合わせて砲弾を炸裂させないといけないため、非常に高い技量が求められる射撃方法です。しかし、富士山をバックに撮れなかったのが残念。




射撃後は速やかに撤収を行います。やはり、99式が一番早く、自走20りゅうは車体の周りの機材を片付けたら撤収します。FH−70は砲を180度回転させ、脚を閉じたりしないといけないので結構時間がかかります。




中距離火力

迫撃砲

 迫撃砲は普通科部隊が装備しており、普通科部隊で唯一の面制圧火力で、前線地域に展開し、普通科部隊などの戦闘行動を機敏に火力支援を行います。



120mm迫撃砲RTは自衛隊の保有する迫撃砲で最大口径のもので、中隊が運用を行っています。車輪が付いているため、専用の車両で牽引します。




81mm迫撃砲L−16は小隊が運用を行っており、小型・軽量で、分解することによって山中など車両が入れないところにも持っていくことも可能です。




120mm迫撃砲は通常、砲の先端部分から砲弾を挿入し、砲弾が砲身の中を滑って行き撃針に当たって撃ち出されます。




ファイアリングが写った迫力のある写真が撮れてよかったです。炎の中を抜けていく砲弾...今回のベストショットかな。しかし、近くにいる人は熱くないのか?120mm迫撃砲と81mm迫撃砲は初弾発射後、これが弾着する前に2弾目を発射しました。




120mm迫撃砲、81mm迫撃砲ともに3発射撃した後に速やかに陣地転換を行います。迫撃砲もりゅう弾砲と同じく、射撃するとレーダーで捉えられて撃ち返しを受けるために速やかに陣地転換を行います。120mm迫撃砲は砲に牽引用のフックを取り付けて専用の車両で牽引します。




81mm迫撃砲は主要3部分に分解してトレーラーに積載します。このように分解することによって人力で運ぶことができ、山中などにも持ち込むことができるほか、UH−1やUH−60でも運搬することができます。



誘導弾

 誘導弾(ミサイル)は戦車などを撃破するためのもので、日本初の誘導弾である64式対戦車誘導弾から年代順に展示するので進化の過程が良く分かります。



64式対戦車誘導弾は我が国初の誘導弾で、誘導弾を有線で誘導して目標に命中させます。飛翔速度が遅く、簡単に目で追えるため一般受けがよく、飛翔時の音も独特です。性能的には設計が非常に古いため現代ではあまり通用しなさそうです。古いために陸自でも保有している部隊は徐々に少なくなっており、いつまで展示されるかわかりません。




79式対舟艇対戦車誘導弾は名前の通り、舟艇(上陸用の小型船舶)や戦車を撃破可能で、そのために射程や破壊力が大きいのが特徴で、これは赤外線半自動有線誘導で、照準器で命中するまで目標を照準し続けて、誘導弾と照準とに誤差が生じたら自動でそれを修正します。




87式対戦車誘導弾は戦車用の誘導弾で、これまでの誘導弾と違い、有線で誘導する必要はなく、目標をレーザーで照射することで誘導弾を誘導します。




96式多目的誘導弾システムは79式対舟艇対戦車誘導弾の後継として開発され、長射程で夜間射撃能力があり、誘導方式は光ファイバTVM赤外線画像誘導方式と呼ばれるもので、誘導弾にあるカメラの映像を光ファイバで受信し、目標へと誘導する。




64式対戦車誘導弾は飛翔速度が比較的遅いため飛翔するのが良く分かり、独特の音を出しながら飛翔していく。(赤い光の部分が誘導弾で、右上の写真が命中の瞬間)




79式対舟艇対戦車誘導弾は発射してしばらくしてから再加速し、目標へ飛んでいきます。発射直後から速度を出して飛んでいかないのは射手などをロケットの噴射から守るため。(矢印で示したものが誘導弾)



79式対舟艇対戦車誘導弾の飛翔&命中(左下)の写真。遠くの標的めがけて正確に飛翔していきます。




87式対戦車誘導弾は有線誘導ではないため飛翔速度が速く、あっという間に命中します。(矢印で示したものが誘導弾)




96式多目的誘導弾の射撃ですが、去年までは発射機が見えるように展示していたのですが、今年はそれをしないようです。できれば来年から見えるように射撃位置を戻してほしい。



96式多目的誘導弾は上空高くに飛んで行き、急降下して目標に命中します。




近距離火力

対人障害

 対人障害として指向性散弾が展示されました。この指向性散弾は対人地雷に替わるもので、敵を発見したら散弾を発射するものです。今回は、効果が分かりやすいように指向性散弾と同時に爆薬を爆破しています。



下のシーンでは煙が上がっているのは“C”より左側ですが、“C”の右側にある風船が木っ端微塵になっています。これは、指向性の爆薬によって直径約1cmの金属球が爆破の威力で高速で飛んでいっているからです。



ヘリ火力

 ヘリ火力は対戦車ヘリコプターAH−1Sの射撃展示です。AH−1Sの後継となる最新の戦闘ヘリコプターAH−64Dの登場&射撃が期待されましたが、射撃は来年度以降にお預けのようです。



AH−1S、通称コブラの20mm機関砲の射撃ですが、反動によって徐々に後退して行っています。AH−64D(アパッチ)の30mm機関砲のときはどうなるのか楽しみです。



普通科火力

 普通科火力は普通科部隊が近距離で使用する装備をなどを紹介するものです。CH−47を使ったファーストロープ降下などを普通科火力に入れるのか迷いましたが、こちらに分類しています。



このファーストロープ降下は太いロープ(綱引きで使用するの綱のようなもの)を手と足で挟んでその挟み具合を調節して降下する方法で、隊員個々が器具を使用しないため隊員は着地後速やかに戦闘態勢をとることができるのが特徴です。




普通科部隊の分隊を輸送してきた輸送ヘリコプターCH−47は速やかに離脱します。上の写真を見ると長い胴体側面の下側の膨らみが小さいことからJ型であることが分かる。これが大きいと航続距離がJ型よりも伸びたJA型ということになる。




降下した分隊は敵の侵攻を食い止める(遅らせる?)ために橋梁をTNTにより爆破します。スクリーンに映っているのは起爆用回路を構成しているところ。




起爆回路によって爆薬に点火させ、爆破します。実際には橋梁は無いですので、あらかじめ白の台に設置された爆薬を爆破するだけです。




爆破後は敵の攻撃を受ける前に速やかに離脱します。先ほどのCH−47が再び飛行してきて、上空からロープをたらします。隊員たちはこのロープを金具でそれぞれに固定します。準備が整ったら分隊長(?)が親指を立てて上に合図を送ります。




ヘリは上昇をはじめ、隊員たちをロープで吊り下げながら離脱していきます。これは、エキストラクションロープと呼ばれる離脱方法で、ヘリが着地できない地点などで速やかに離脱するための方法です。




吊り下げられた隊員は地上から攻撃を受けなように銃を構えながら警戒しています。このままどこまで飛んでいくのでしょうか(近くで隊員たちを降ろしているはずです)。




次は軽装甲機動車が進入してきて、車載した5.56mm機関銃MINIMIを射撃します。軽装甲機動車自体は固有武装はありませんが、乗車する隊員の持っているMINIMI機関銃を取り付ける銃架と防弾盾がついています。




続いて01式軽対戦車誘導弾(通称、軽MAT)の射撃です。この軽MATは射撃時の爆炎などが少ないため狭い場所からも射撃が出来るのが特徴です。と言っても結構爆炎がでていますね。




次は96式装輪装甲車が進入してきて2両は12.7mm重機関銃を射撃し、3両は84mm無反動砲と110mm個人携帯対戦車弾を射撃するための陣地に進入して行きます。




車載された12.7mm重機関銃を射撃します。目標付近は地面がえぐれており、その威力が分かります。




射撃終了後は96式装輪装甲車の後部に乗車していた普通科隊員が下車戦闘を行います。去年度は小銃にみんなさんダットサイトをつけていましたが、今年はつけていません。




下車した隊員は89式小銃やMINIMIなどで標的に向かって射撃します。89式にダットサイトはつけていませんが、一部隊員は折りたたみストックバージョンの89式です。標的(写真右上)が燃え上がっているのは射撃の効果がわかりやすいように標的に燃えるように細工をしているから。




そして、射撃陣地から84mm無反動砲と110mm個人携帯対戦車弾を射撃します。射撃時の爆炎などの関係で会場から見えない位置から射撃するため、写真のように会場前で隊員が構えて見せてくれます。




84mm無反動砲から射撃したりゅう弾が空中で炸裂した瞬間。空中で炸裂することによって散兵を攻撃できます。手前の煙の上がっている位置から射撃しています。




110mm個人携帯対戦車弾が命中した瞬間で、この携帯対戦車弾は射程は短いですが、威力は強力です。




84mm無反動砲から対戦車りゅう弾(写真下)と発煙弾(写真上)を射撃しました。このように、84mm無反動砲はりゅう弾、対戦車りゅう弾、発煙弾のほか、照明弾を射撃することが出来、汎用性に優れています。




普通科火力の最後として、89式装甲戦闘車が2両が進入してきました。89式装甲戦闘車は90式戦車と一緒に行動ができるように開発され、35mm機関砲と79式対舟艇対戦車誘導弾(対戦車ミサイル)による強力な武装と、装甲を備えています。




89式装甲戦闘車は35mm機関砲の射撃のみで速やかに撤収します。しかも35mm機関砲の射撃も少ない。3の台に向けて2両が3発ずつ射撃し、そのまま撤収していってしまいました。89式装甲戦闘車は96式のように人員を輸送できるので、できれば下車戦闘も行ってほしいのですが・・・。

89式装甲戦闘車2両は、進入してきてすぐに35mm機関砲で3の台の装甲車に対して3発射撃(計6発で装甲車を撃破できるなんてさすが35mm砲)し、射撃後速やかに撤収していくという高い機動性を見せつけてくれました。




装甲機動打撃力

 装甲機動打撃力として、90式戦車が走行しながら3発射撃します。走行している車体から正確に目標に命中させるのは高い能力を持った90式戦車だがらできる技です。74式ではたぶん無理。



砂塵を巻き上げながら90式戦車1個小隊が進入してきました。短時間のうちに3発射撃します。




第1発め。




第2発め。




第3発め。いずれも発砲炎が取れませんでした。しかし、90式戦車の120mm砲の射撃音は病み付きになります。




空挺降下

 空挺降下は習志野にある第1空挺団の隊員が自分でパラシュートを開く自由降下と言う方法で降下を行い、会場前に着地します。空の神兵が流れるなか、降下してくる姿は実に優雅です。



上空に輸送ヘリCH−47が飛行してきました。ヘリから飛び出す瞬間を撮りたかったのですが、この直後にヘリは雲の中に入ってしまい撮れませんでした。




5人の空挺隊員がらせん状にくるくると回転しながら降下してきます。




ふわぁ、っと




着地。実際は戦闘に必要な装備を持って降下してきます。



これにて前段演習終了。後段演習終了までの約30分間は音楽隊による演奏が行われます。生で音楽演奏を聞くなんてめったに無いことです。

随所で動画を撮ったのですが、その公開は今しばらくのお待ちを。













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