90式戦車回収車は
90式戦車から砲と砲塔部分を取り除き、クレーン装置やけん引装置などを乗せた車両で、90式戦車などの回収ができるように開発された。
戦車回収車とは、故障した戦車などをけん引したり、エンジンなどの交換作業を行う車両であり、90式戦車が登場する以前に主力であった74式戦車を回収するために78式戦車回収車が存在する。しかし、74式戦車よりも重量が増している90式戦車を回収するには能力が不足しているため90式戦車回収車が開発された。
車体部分は90式戦車と同様でエンジンも同様のものが搭載されている。このため、90式戦車が走行できる地点であれば90式戦車回収車も走行できるため、あらゆる場所で回収作業が行えるといえる。また、90式戦車と同様の車体を使用しているため、攻撃にも強く、敵の攻撃下にある状況でも作業が可能となっている。
回収能力に関しては、車体の右側に大型のクレーンがあり、このクレーンのつり上げ力は25t以上あり、90式戦車のエンジンや砲塔部分をつり上げることが可能である。また、車体の前方にはウィンチがあり、こいれを使えば深みに落ちた車両を引っ張り上げることも可能である。また、車体前方にはスペードがあり、これは作業スペースを整地するだけでなく、このスペードをストッパーとして使用することによりウィンチ使用時に車体が滑るのを防ぐことができる。
エンジンが故障して自走できなくなった車両は、90式戦車回収車の車体後部と故障車をワイヤーでつなぎ、整備ができる地点までそのままけん引してゆく。また、車体後部上面のスペースには予備のエンジンが載せられるようになっており、クレーンを使って故障車のエンジンを交換することもできる。
90式戦車回収車は90式戦車と車体が同様であり、敵の攻撃に強いが、敵との交戦はほとんど考慮されておらず、自衛用として車体上部に12.7mm重機関銃を備えているのみである。このため、敵との遭遇が予想される地点や敵が目前にいるような状況下では戦車などの援護のもと作業を行うことになる。また、車体の正面には8発の発煙弾発射装置があり、敵からの照準レーダーを照射された際にはこれを使って回避することができる。
諸元・性能 |
名称 |
90式 戦車回収車 |
乗員 |
4人 |
全備重量 |
約50t |
全長 |
約9.2m |
全幅 |
3.43m(スカート付) |
全高 |
約2.7m |
キャタピラ幅 |
600mm |
つり上げ力 |
25t以上 |
牽引力 |
約50t |
登坂能力 |
約60% |
武装 |
12.7mm重機関銃 M2・・・1 |
エンジン |
水冷2サイクル10気筒ディーゼル機関 1,500PS/2,400rpm |
開発 |
防衛庁技術研究本部 |