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前段演習

 前段演習は陸自の主要装備の紹介として遠・中・近距離、そして戦車火力の順に紹介されます。


遠距離火力

航空火力



 まず、航空火力として航空自衛隊のF−2支援戦闘機を使った模擬爆撃が展示されます。予定ならF−2の上空通過に合わせて地上に設置された爆薬をタイミングよく爆破させて爆撃を模すはずでしたが、天候不良によりF−2は飛来せず爆薬の爆破のみになりました。



特科火力



 次に、特科部隊の展示です。特科部隊は大砲やロケット、ミサイルなどを使って遠距離から敵を攻撃する部隊です。

 まず、82式指揮通信車が先行して進入します。この写真ではわかりませんが、隊員のみなさん戦闘防弾チョッキ2型を着用しています。戦闘防弾チョッキ2型は1型に代わるものとして配備が進められており、セラミックの防弾プレートを挿入することにより小銃にも耐えることができます。また、ポーチなどの装備を任意に装着できるようにもなっています。





 続いて各火砲が進入してきました。写真の火砲は203mm自走りゅう弾砲で自衛隊の中で最大口径の火砲で、大口径による大きな破壊力を持つのが特徴です。





 弾薬車から203mm自走りゅう弾砲に対して弾薬を渡します。この203mm自走りゅう弾砲は砲弾1発が90kgあります。
砲弾を装填する際は砲弾を専用のラックに収め2人がかりで203mm自走りゅう弾砲の左側後方にある専用のクレーンにラックをひっかけます。そのクレーンを使って装填装置に砲弾をのせて装填装置が砲身の後ろまで移動して砲弾を砲身に送り込む仕組みになっています。この方法とは別に、弾薬車を後ろにつけて弾薬車の弾薬庫にクレーンを延ばしてそこから砲弾が収まったラックをひっかけて砲弾を装填することもできます。





 火砲が射撃を開始します。まず、一番最後に進入してきた99式自走155mmりゅう弾砲2両が4回続けて射撃を行います。99式は照準や砲弾などの装填が自動化されているためこのように速やかに射撃準備ができ、続けて射撃することができます。
写真の上のあたりの黒いゴミのようなものが発射された砲弾になります。





 次に203mm砲の射撃です。砲身の右側の黒い塊は発射された砲弾です。この203mm砲は砲弾が大きいことなどから射撃速度は最大で毎分1.5発ですが、逆に砲弾が大きいため破壊力はけた違いの大きさです。





 次に155mmりゅう弾砲FH70の射撃です。FH70は牽引式の火砲で、北海道を除いた全国の部隊に幅広く配備されており、陸自の主力火砲です。砲弾の装填などはすべて人力で行います。
FH70は会場前に展開したもの以外に別の地域に射撃陣地があり、中隊総力射と大隊総力射を行いました。





 そして、展示射撃として砲弾を順に弾着させる弾道射撃が行われました。
会場前に展開している各火砲と会場後方に展開している部隊がタイミングを合わせて射撃を行い青い矢印の方向に向かって順に砲弾が空中で炸裂していく弾道射撃を行いました。





 次に2段山から3段山の上空に曳火射撃により射撃を行います。何気なくやっているように見えますが、違う種類の火砲が違う射撃位置からそれぞれ射撃して同時に弾着させるためには100分の1秒の射撃精度が要求される非常に難易度が高い射撃です。





 雨が強くなってきましたが、最後に曳火射撃により3段山上空に富士山の形を描く恒例の射撃が行われます。前述したとおり異なる火砲と射撃位置から同時に弾着させるためには非常に高い技量が要求されます。また、富士山の形になるようにそれぞれの火砲が正確に射撃しなけれまなりません。





 雨が強くなった関係で富士山の形の上の辺が見えませんが、下の辺は少し見えています。





 大粒の雨が叩きつけてきていますが、隊員の皆さんはずぶぬれになりながらも撤収作業を行っています。99式はすべて車載しているので速やかに撤収が可能です。FH70は射撃姿勢から牽引姿勢に変えなければならないため撤収に時間がかかります。
現代の戦闘では火砲が射撃するとレーダーによって砲弾を捉えられて弾道から計算されて射撃位置が判明して敵からの攻撃を受けてしまうのである程度射撃を行ったら速やかに陣地転換などをしなければなりません。




中距離火力

迫撃砲



 次に中距離火力として迫撃の展示です。写真の車両は81mm迫撃砲L16を搭載したトレーラーを牽引しています。81mm迫撃砲は分解して人力でも運搬が可能で山中などの車両が入れない地域にも持ち込むことができます。





 そして、こちらは120mm迫撃砲RTとそのけん引車です。この120mm迫撃砲は専用の車両でけん引して移動し、けん引車には120mm迫撃砲を操作する隊員のほか砲弾も搭載することができます。





 雨が少し弱くなってきました。
写真の右下にある(黒い円筒形の物の上)のが砲弾になります。この砲弾を砲身から滑り込ませるようにして射撃を行います。





 81mm迫撃砲です。上の写真の120mm迫撃砲と比べるとかなり小型です。ちなみに一番右側にいる隊員の手元(木箱の上)にあるのが砲弾です。120mm迫撃砲のものと比べるとかなり小さいです。





 120mm迫撃砲と81mm迫撃砲が射撃を開始しました。120mm迫撃砲は空中で砲弾を炸裂させる曳火射撃、81mm迫撃砲は地上で砲弾が炸裂する着発射撃をそれぞれ3発射撃します。
飛翔速度などが違う120mmと81mm迫撃砲は同時に弾着するように射撃を行います。さらに、射撃角度を変えながら射撃することにより1発目が弾着する前に2発目を射撃しました。現代戦ではレーダーによって砲弾が捉えられて敵から反撃を受けるので速やかに攻撃し、速やかに撤収(陣地転換)することが重要になります。





 弾着の様子です。



誘導弾



 迫撃砲部隊が撤収し、依然として雨が降りしきるなかミサイル部隊が進入してきました。上の写真は87式対戦車誘導弾(通称、中MAT:ちゅうまっと)を積載した小型トラックです。





 こちらは96式多目的誘導弾システムの発射機で、96式多目的誘導弾システムはこの発射機のほか射撃指揮装置、情報処理装置、地上誘導装置などから構成されます。





 そして、こちらは89式装甲戦闘車で、この89式装甲戦闘車は砲塔の両側面に78式対舟艇対戦車誘導弾(通称、重MAT:じゅうまっと)をの発射機を備えています。例年、重MATは観客席から見えない場所から専用の発射機から射撃されますが、今年は観客席から見える位置でしかも89式から発射します。





 重MATの射撃シーンです。この重MATは有線によって目標へと誘導されます。目標は例年通り3段山下の標的です。



79式対舟艇対戦車誘導弾 〜実弾射撃〜」のビデオ
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 射撃時の動画です。撮影は命中まで行ったのですが、一眼レフカメラの撮影と同時に行ったため命中シーンはうまく撮影できませんでした。そして、写真のほうもうまくいかずに写真、動画とも共倒れになってしまいました。





 こちらは87式対戦車誘導弾の射撃です。青い矢印で示したのが発射されたミサイルで、写真左下が命中シーン。





 次は96式多目的誘導弾システムの射撃ですが、2段山一帯が霧で覆われており、目標が視認できなため射撃中止となりました。写真は広場に展開した隊員が撤収するシーン。




近距離火力

対人障害



 対人障害として指向性散弾の展示が行われました。指向性散弾とは直径約1cmの鉄球を爆破によって高速で飛翔させてその鉄球によって歩兵を撃破する装備です。例年なら2カ所あるうちの右側から順に点火(爆破)していきますが今年は左からだったので右側の標的にカメラを向けていましたが左が爆破され、慌ててカメラを左に向けたら右側が点火されてしまったのでうまく撮影できませんでした。ということで、上のような写真しかありません。
指向性散弾の展示が見たいなら去年の前段演習のレポを見てください。



普通科火力



 次に普通科火力の展示です。普通科とは海外でいう歩兵に相当する部隊(職種)です。
輸送ヘリコプターCH−47が進入してきて広場の右端で急停止します。





 CH−47の後部ドアから隊員がロープ降下します。この後爆薬を設置し、起爆回路を構成して爆薬を爆破するのですが、そのシーンは撮影できませんでした。理由は...。





 この人が歩いてきて、気になったためです。迷彩の網のようなものはギリースーツと呼ばれるもので、これを着ることにより通常の迷彩服よりも高い迷彩効果を発揮します。さらに、手に持っているのは対人狙撃銃です。この対人狙撃銃は2003年度からゲリラ対策などのために導入されたものです。





 伏せている2人のうち1人が銃で狙撃し、もう1人は観測手で、目標の距離などを見る役目を負っています。戦車用の射撃台からおよそ500m離れた人型の標的の中央部分の白い小皿を狙撃します。
上の写真では奥に人型の標的が2つあり、左側の標的には白いものがありませんが、これはすでに狙撃されたためです。右側の小皿もこの後狙撃によりなくなります。
今回がおそらく対人狙撃銃の初めての射撃展示で、もちろん私も初めて見ましたが、狙撃音はどちらかと言えば「ぷしゅっ」といった感じで、小銃のような射撃音ではありませんでした。これはおそらくボルトアクション式であるためだと思います。





 お次は軽装甲機動車が進入してきました。例年なら4両進入し、2両が5.56mm機関銃MINIMIを射撃し、残りの2両が01式軽対戦車誘導弾を射撃します。が、今年は2両のみが進入してきて01式軽対戦車誘導弾のみを射撃しました。
この場面でのMINIMI射撃はありません。その代り(?)に後段演習での偵察活動時に軽装甲機動車からMINIMI射撃をします。詳細は後段演習のページで。





 その01式軽対戦車誘導弾の射撃です。01式軽対戦車誘導弾(通称、軽MAT:けいまっと)は個人で射撃できる対戦車ミサイルで、射撃の炎が少ないため塹壕や建物内などからも射撃することができます。写真はミサイルが発射された瞬間で。ミサイルの噴射は射手に当たらないように両側に分かれて噴射されています。



01式軽対戦車誘導弾 〜実弾射撃〜」のビデオ
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 低伸弾道モードとダイブモード射撃の動画ですが、ダイブモードのときは一眼レフカメラを操作していたので動画を撮っていたデジカメは三脚に固定したまで、ずっと軽装甲機動車を撮っています。





 続いて96式装輪装甲車が進入してきて、一部は無反動砲などの射撃陣地に進入し、残りが広場に進入します。





 広場のに進入した96式装輪装甲車は車載している12.7mm重機関銃を射撃します。迫力のある射撃音とともに赤い閃光が標的に吸い込まれていきます。





 機関銃による射撃ののち乗車していた隊員が後部ドアから下車して下車戦闘を行います。この96式装輪装甲車は乗員のほかに8人が乗車できます。ちなみに写真に写っている隊員の方も戦闘防弾チョッキ2型を着用しています。





 下車した小銃小隊は89式小銃と5.56mm機関銃で射撃を行います。





 続いて無反動砲などの射撃陣地に進入した部隊が84mm無反動砲と110mm個人携帯対戦車弾を射撃します。射撃位置は観客席から見えない位置なので火器の説明のため観客席前でこのように隊員が火器をかまえます。
ちなみに写真の隊員が構えているか気は84mm無反動砲です。そして、戦闘防弾チョッキ2型を着用しています。





 84mm無反動砲がりゅう弾を射撃しました。このように空中で炸裂することにより広範囲の歩兵に対してダメージを与えられます。





 次は110mm個人携帯対戦車弾です。この火器は射撃時の反動が少なく、さらに強力な破壊力を持っています。





 そして、84mm無反動砲による対戦車りゅう弾の射撃です。文字通り対戦車用のりゅう弾で威力は110mm個人携帯対戦車弾よりも劣りますが、射程は倍近くあります。





 最後に84mm無反動砲から発煙弾が射撃されました。このように84mm無反動砲はりゅう弾、対戦車りゅう弾、発煙弾のほか照明弾もあり、汎用性に優れています。






 89式装甲戦闘車が進入してきました。89式装甲戦闘車は35mm機関砲のほか対戦車ミサイルなどを搭載しており、強力なエンジンと装甲により迅速に敵の火力脅威下においても人員を輸送することができます。
(89式装甲戦闘車はカッコいいので2枚写真を載せました)





 35mm機関砲の射撃です。今回の見学位置が悪かったせいで車両と砲弾が写っている写真はありません。



ヘリ火力



 ヘリ火力としてAH−1Sによる20mm機関砲と対戦車ミサイルのTOW射撃です。が、写真のように20mm機関砲は射撃しましたが、TOWの標的が霧により視認できないため射撃中止となりました。総火演では数年ぶりのTOW射撃を楽しみにしていましたが、非常に残念です。来年も今年と同じようなプログラム構成にしてほしいです。




戦車火力





 戦車火力として90式戦車が行進しながら射撃を行います。雨が一層と強くなるなか、左手から進入してきた90式戦車1個小隊は次々と射撃を行いましたが、カメラの設定をミスっていたのでうまく発砲炎が撮れませんでした。
いちばんましなのが一番下の写真ですね。今年はいろいろと教訓が多い総火演でした。





 次に74式戦車による一斉射撃(確か2個小隊)です。今年は豪華ですね。





 発砲炎は相変わらず撮れません。
そして、戦車火力の次は空挺降下が予定されていましたが、視界不良により中止となりました。予定では例年展示されている自由降下に加え、集団降下も行われるはずでした。非常に残念です。




全段演習終わり。



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